好き≠恋(日文版)-第12部分

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「いや、夏バテ……、かもしれない」
　ウソを吐くのはあまり好きではないが、何かあった理由もジンには話せなかった。まだ、さほど仲良くないと言うのが第一の理由で、第二は歩に抱いている感情を誰かに教えられるのが嫌だった。
「夏バテねぇ……。確かに最近、あっついもんなぁ。夏バテには、カレ�‘が一番！　ってことで、今日はカレ�‘にしよう！　歩は料理できないから、俺が手伝うし。やらせっぱなしって、好きじゃないんだよなぁ」
「……え」
　昨日の昼にカレ�‘を食べたばかりなので、今日の夕飯でカレ�‘と言うのは避けたかった。それ以前に、やはり憶測通り家でご飯を食べる予定だったなら、買い物に行かなければいけない。すれば自然と、またあの公園を通り過ぎなければいけないことになる。あんな場所、二度と行きたくなかった。健人は一度、ジンに確認を取る。
「うちで食べるの？」
「……え、あ、歩から聞いてないの？　健人君の料理美味いから、食べてみろって言われたんだけど……。つ�‘か、アイツ、本当に肝心なところ話さないんだなぁ。本当に、サイテ�‘」
　ジンの言うとおり、歩は肝心なところを健人には一切話していなかった。まさか、影でそんなやり取りが行われているとは思わず、健人はため息を吐く。一瞬、沈黙が場を包み、健人はジンを見た。目が合うとジンがプッと噴出して笑い、なんだか健人まで楽しくなってしまい、小さく笑った。ジンと話していたら悩んでいたことが吹っ飛んでいってしまいそうだった。少しだけ笑うと肩の力が抜け、健人はソファ�‘に座った。
「健人君が笑ってるの、初めて見たかも」
「……え？」
「こう言うのも失礼かもしれないけどさ�‘、健人君って結構、同じ顔してるじゃん？　笑ったりとか滅多にしないし。けど、今の笑った顔見て、ちょっと安心した」
　昔からさほど感情豊かな人間ではなかったため、笑ったりしないのが当たり前になっていた。健人は眉間に人差し指を当てて、数回なぞる。高校に入ってから嫌なことが多すぎて、眉間に皺を寄せていることが多かった。友達も何も要らないと思っていたから、誰かと交流も深めていなかった。ジンがそんな風に見ていてくれていたとは知らず、仄かに嬉しくなる。
「言われてみたら、人前で笑うの、久しぶりかも」
「へぇ、じゃぁ、歩の前でも笑ったりとかしないんだ？」
「……多分、あいつの前で笑ったことって無いと思う」
　記憶を手繰り寄せて、健人は呟いた。歩の前はおろか、この家に来て心から笑ったことなんて一度も無い。母の前で笑顔を見せることはあっても、それは本心からではなく、心配させまいと無理をした笑顔だった。無理して笑うたび、自分の中から何かが落ちていく。それは、感情だったのだろうか。
　俯いている健人を見て、ジンは健人の隣に座る。皮で出来たソファ�‘はスプリングが効いていて、落ちるように座るとぎしぎしと揺れた。
「アイツ、時たま、すげ�‘ウザイよな」
　ジンは天井を見上げて、独り言のように言う。
「なんっつ�‘のかなぁ。表面上はみんなと仲良くしてるように見えるんだけど、一線引いちゃってるんだよなぁ。それがさ、仲良くしてあげてますよ�‘って感じでウザかったわけ。そんでまぁ、俺と歩は1回大喧嘩してるんだけど」
「……へぇ」
　健人はジンに目を向けながら、確かにそうだなと学校にいる歩を思い出した。人見知りもしないし、顔が良いから人も集まってくる。話し掛けてくる相手には笑顔で対応し、一人でいる人には自分から話しかけに行ったりもしていた。全て、同じあの振りまいてるような笑顔で。この前まで、健人はあの笑顔こそが、本当の笑顔だと思い込んでいた。しかし、停電の日に見せた笑顔を見てから、その考えは一変した。
「アイツさ、不器用なんだよね。器用そうに見えるけど。全然、器用じゃね�‘の。笑っちゃうぐらい。だからさ、あんまり健人君も愛想を尽かさないでやってほしいんだよね。鬱陶しいと思うけど」
　ジンはそこで健人に目を向けて、困ったように笑った。誰かからこうして歩の話を聞いたことなんて一度も無く、どれほど歩のことを知らなかったのか思い知らされた。嫌いと言う感情だけで歩の全てを否定し、真正面からそれを受け止めようともしなかった。今更、こんなことを言ったって、許してなんて貰えないだろう。胸の奥がつっかえているようで、嗚咽を漏らしそうになり口元を押さえた。
　相手のことを何も知らずに嫌うなんて、本当に傲慢だと思った。今になってようやく、歩に言われた言葉の意味を知る。
　きっと、未だに歩は自分のことを嫌っているだろう。可愛そうだから、嫌わずに居てあげてるだけだと、健人は思った。
「……愛想を尽かされるのは俺のほうだ」
「え……？　どゆこと？」
　漏れるような声にジンは耳を疑った。健人の料理を美味い美味いと大絶賛していた歩が、健人に愛想を尽かすなんて考えられない。どこでどう二人の考えが捻じ曲がってしまっているのか、ジンには分からなかった。
　黙りこんで俯いている健人を見て、ジンは何かいけないことを言ってしまったのかと思う。もしかして、歩の話はまだ禁句だったのだろうか。けれど、歩からこの前「仲直りしたよ」と言う電話をもらったから、話をしても良いと思っていた。仲直りしたのは歩の勘摺�いで、健人の中ではまだ嫌っているのだろうか。しかし、それでは愛想を尽かされると言った理由が分からない。
「……なぁ」
「え、あ、何？」
　顔面蒼白になっている健人から話しかけられ、ジンは少し慌てながら答える。
「嫌いな奴に優しくされたら、どう思う？」
　救いを求めるような眼差しで見つめられ、ジンは「……ん�‘、ウザイから無視かな」と冗談交じりに答える。真面目な返答を求めてきていることは分かっていたが、ジンが真面目に答えても意味は無い。今の健人に出す答えなんて、気休めにしかならない。
「健人君は、どう思ったの？」
　逆に伲鼏枻丹臁⒔∪摔仙伽筏坤笨激à搿Ｇ挨蓼扦膝弗螭韧�じようにウザイと思って無視していた。でも、今は摺�う。無視しきれないし、誰かと話しているのを見たらやきもきしてしまう。それがどういう感情なのか、無視できなくなっていた。
「分かんなくなった」
「……へぇ、そっか。健人君、かなり悩んでるようだから、コレは教えてあげる。優しくするなんて、本当は凄く簡単なことなんだよ」
「え……？」
　人に優しくすることがどう簡単なのか分からず、健人はジンを見つめた。少なくとも、健人は誰かに優しくしたことなんて無い。
「だから、歩がしてることなんて誰でも出来るようなことなんだよ。むしろ、冷たくしたり、本音をぶつけるほうのが難しい。歩の場合は、特にね。アイツ、自分の本音は、聞かれないと言わないんだ。誰かに聞かれるまで、ず�‘っと黙り込んでるの。バカだよなぁ。人のこと、信頼してないのかっつ�‘の」
　黙ったまま何も言わない健人に、ジンはニッと笑う。嫌いだと言われた奴から、いきなり優しくされて健人は驚いているのは分かった。けど、どういう経緯で仲直りしたのか、健人も歩も話さないから根本が分からない。どうして、健人はこんなにも悩んでいるのだろうか。気になって仕方なかった。
「歩が本音を自分から話したのは、健人君だけだよ」
「……でも、俺はアイツに酷いことしてた」
「ん、まぁ、歩はなんとも思ってないみたいだからい�‘んじゃないんかな�‘」
　健人から目を逸らして天井を見上げたジンの視線を追う。外はもうオレンジ色に染まっていて、蝉の鳴き声も聞こえなくなってきていた。
「健人君は、どう思ってるの？　歩のこと。まだ、嫌い？」
　またも突きつけられた究極の伲鼏枻恕⒔∪摔洗黏à椁欷胜�った。嫌いかと尋ねられたのだから、嫌いか摺�うかを答えれば良いだけなのに、明確な答えが頭の中に浮かばなかった。答えてしまえば、はっきりとした答えが出てしまいそうで、怖かったのだ。自然と頭の中で、それを回避していた。
「……分かんない」
　ため息と共に吐き出すと、「……そっか」と小さい返事が聞こえてきた。静かになったリビングに、エアコンから風の吹く音だけが響いていた。
「あ、そうだ！」
　その静寂を突き破るように大声を出したジンに、健人は驚く。目を見開いて立ち上がったジンを見ると、ジンはニコニコと笑いながら「夕飯、どうしよっか！」と健人に尋ねる。そこでようやく、もう夕飯を作らないといけない時間なのかと、健人は時刻を確認した。
「……買出し行かないと、何も無いんだ。冷蔵庫」
「じゃ�‘さ、決めてから一緒に行こう！」
「うん……」
　笑いながら話し掛けてくるジンを見つめて、健人は心持ち、楽になった。一人で悩んでいたときよりも分かったことが多く、その分、凹んだりもした。けど、それを顔に出してしまってはいけない気がして、健人は頭の中で渦巻く感情をすぐに落ち着かせた。
「あ、そうだ。カレ�‘は昨日の昼に食べたから、別のにしたい」
「ん、そだね。夏だし、暑いから、冷やし中華とかってどう？」
　こうも易々とメニュ�‘を繰り出されるとは思っていなかったが、中華は昨日食べてしまったため、健人は却下する。それを聞いたジンは「ど�‘しよ�‘」と腕を組み、どこか遠くを見つめながら、夕飯の献立を考えている。
「もう、なんか思いつかないから、ハンバ�‘グとかにする？　ソ�‘スは夏らしく、トマトとかで」
「あぁ、それ良いな」
「じゃ�‘、ハンバ�‘グに決まったってことで買出しに行こう！　この時間なら、涼しくなってきたから丁度良いでしょ」
　健人はそれに頷き、ダイニングテ�‘ブルの上に置いていた財布を手に取った。もうこの時間なら、あの公園に歩は居ないだろう。帰ってきても普通の顔が出来るかどうか、不安だ。健人は財布を握り締めてから、ズボンのポケットに財布を突っ込みジンの後を追う。何時になったら、歩は帰ってくるのだろう。待ち遠しいのか、それとも帰ってきてほしくないのかは分からない。
「この辺、ス�‘パ�‘なんかあんの？」
「ちょっと行ったところにある。歩いて20分ぐらい」
「……それ、ちょっとって言わないって」
　その距離が当たり前になっていた健人は、「そうか？」と言いながら立ち上がる。靴を履いているジンを見ながら扉を開けたので、反対側から戸が引っ張られたことに驚き声を上げる。
「うわっ……！」
　何が起こったのか分からず前を見ると、ほんの少しだけ不機嫌そうな顔をしている歩がドアノブを握って立っていた。歩は一瞬、健人を見てからすぐにジンへ目を移し「来てたんだ？」と話し掛ける。
「電話しても出なかっただろ」
「……あ�‘、ごめん。携帯、持って行くの忘れてた」
　歩は無表情でそう答えると、後頭部をカリカリと掻いて健人を見る。その目は冷たく、健人は声が出なくなった。
「どっか行くの？」
「……買い物」
「ん、ちょっとジンと話すことあるから、健人だけで行って来てくれる？」
　口元だけちょっと上向かせた歩を見て、健人は「分かった」と言い、家を出た。一刻も早く家から離れないといけない気がして、健人は走る。口元は笑っていたけれど、歩の目は全くと言っていいほど笑っていなかった。やはり、嫌われているのだと思った。優しくしてくれているのは、同情からだ。母と二人で暮らしてきた健人を可哀想だと思っているから、歩は優しくしてくれているのだ。
　そう分かってしまったら、胸が締め付けられて苦しくなった。
　歩といると、苦しいことだらけだ。健人はがむしゃらに走りながらそう思った。
　パタンと音を立てて扉が椋Г蓼搿％靴骏靴郡冉∪摔巫阋簸�遠ざかっていき、靴を履いていたジンは見下ろしている歩を見た。
「こっわい顔しちゃって、どうしたんだよ。俺も健人君も、悪いことはしてないと思うけど？」
　茶化すように話しかけて来たジンに、歩は「別にそんなこと言ってない」と言う。けれど、見下ろしている目は蔑んでいるようにも見え、ジンの心中はあまり穏やかではなかった。それ以上に、歩の機嫌が悪い。見て分かるぐらいに感情を表に出しているなんて珍しいことだから、つい、からかってしまう。
「じゃぁ、何なんだよ。電話にも出ないし、帰ってきたと思えば機嫌が悪い。ふざけてんのかよ」
「……ふざけてなんかいないって」
「じゃぁ、何で機嫌悪いんだよ。悪くないなんて言わせないからな。高いところから見下しやがって。腹立つ」
　腹立つと言われても、歩はその場から動かなかった。背が高いのは遺伝的なもので、仕方が無い。玄関の扉に凭れて、歩はジンを見ていた。
　二人を静寂が包む。夕方になったと言っても、まだ気温的には30度を越しているので、玄関は蒸し暑い。蒸し風呂に入っているような感覚だ。
「ジンに怒られるようなことはそんなにしてないと思うけど」
「まぁ、俺が怒るのは筋摺�いかもしれないけどなぁ。お前がそんなだと、いつか本気で健人君に嫌われるぞ」
　健人の名前を出すと歩の眉間がピクと動いた。その様子をしっかりと目に焼き付けていたジンは、仲直りしたかもしれないが、二人の間で何か気まずいものがあると感づく。しかし、健人にしても歩にしても、それを話そうとはしなかった。
「何でそこで健人が出てくんだよ」
「お�‘、必死だなぁ。何で、健人君一人で買い物に行かせたの？　俺、行く約束してたんだけど、勝手に決めないでくれる？」
　何でと聞かれて歩は答えられなかった。玄関を開ける前からジンがそこにいたのは気づいていて、健人と仲良さそうに喋っているのを見たら、割り込まずにはいられなかったのだ。健人にはジンと仲良くできると言って、仲良くしてもらいたかったのに、実際、それを目の当たりにしたらむしゃくしゃしてしまった。焦がれるような気持ちが、未だに治まらない。
「買い物なんて、健人一人でも行けるじゃん」
「じゃぁ、なおさら、一緒に行きたかった。健人君、一人で可哀想だし」
「……健人は可哀想じゃない」
　歩が真面目な顔をしてそういうものだから、ジンは笑いが堪えきれず、噴出した。真面目にからかって撸Г螭扦撙郡堡欷伞ⅳ长趣搐趣瘹iはそれに引っかかってくれている。もっと軽くスル�‘されるのかと思っていただけに、予想外だった。
　笑い出したジンを見て、歩は怪訝な顔をした。それから話していた会話を思い出し、からかわれていることに気づく。ジンは歩が思っている以上に鋭い人間で、歩が気づいていないことも気づいていそうだった。
「……何時から来てたんだよ」
「ん、4時ぐらいかな。2時間ぐらい、健人君と喋ってた」
「何、喋ってたんだよ」
　膨れっ面で尋ねてきた歩に、ジンはまた笑い出す。そして、「相変わらず、鬱陶しい奴だなぁ」と感想を漏らし、立ち尽くしている歩を見上げた。
「俺がそう簡単に教えてやると思うか？　気になるなら、自分で聞けよ」
　そう言われるような気がしていたが、健人がジンとの会話を話すとも思えず、歩はムッとした顔でジンを見た。誰かに隠し事をされて、こんなにも気になったのは初めてのことだ。だから、どうして良いのか分からない。
「お前さぁ�‘、本当に健人君と仲直りしたわけ？　俺、そんな風には見えないけど」
「……え、どう言うこと？　一応、今は仲良しですけど」
「それってさぁ、お前の思いこみじゃねぇの？　友情の一方通行もあるけど、仲直りの一方通行もありそうだしなぁ」
　ジンは半ば賭けに出ていた。健人の言った「俺が愛想を尽かされる」と言う言葉が気になっているが、現状、どう考えても先に愛想を尽かすのは健人の方に見える。こんなにも歩から執着されては、鬱陶しくてたまらない。試すように聞いても、歩から返事は返ってこなかった。ジッとジンを見つめて、考え込んでいるようだ。
「まぁ、前よりちょっとは良くなったみたいだし？　良いと思うけどね。せいぜい、健人君に優しくしてやれよ」
「優しくしてるよ」
「歩の優しさって一方的なんだよ。そう言うの、何て言うか知ってるか？」
　ジンは立ち上がって歩を見上げた。優しさが一方的と行ったとき、歩は少し傷ついたような顔をした。しかし、そんなことで気にするような性格でもないし、健人に対して優しくしてあげていると思っているなら、それは間摺�いだ。こんなに厳しいことを言っていても、ジンは歩の親友だ。親友が間摺�ったことをしようとしているなら、阻止する義務があった。
「わかんね�‘なら、教えてやるよ」
　ニヤリと笑うジンに、歩は表情を変えなかった。
「お、し、つ、け、が、ま、し、い、って言うんだよ」
　煽られていると分かっていたが、歩は過剰に反応してしまった。目の前にいるジンの胸偅�を掴むと、ジンは「お�‘、怖い怖い。本当のこと言われて、逆ギレすんなよ」とからかわれる。健人に自分の意志を押しつけているつもりもないし、何も知らないくせに健人のことを分かったように言うジンに歩は苛立ちを覚えていた。殴りそうになり、歩は拳を握る。
「……分かったようなこと言うな」
「お前があんまりにも分かってね�‘から、俺が分かったようなことを言っちゃうんだよ。……あのさ、お前、健人君のことどう思ってるの？　お兄ちゃん？　友達？　それとも、それ以上？」
　一瞬、胸偅�を掴む力が強くなり、脱力したように手が離れた。歩は大きく息を吐きだして、ジンの隣を通り過ぎると玄関の式台に座り今度は見上げた。
「……わかんね�‘よ」
　ため息とともに吐き出した言葉は、健人と同じ答えでジンは笑いそうになった。健人も歩も、自分が何をしたくてどうしたいのかが分かっていないのだ。
「はぁ、まぁ、そんなんで立派に嫉妬してるお前が凄いわ。尊敬する」
「……はぁ？　嫉妬？　何で、俺が健人に……」
「健人君に嫉妬じゃねぇよ！　俺に嫉妬してんだよ！　バカ！　気付け！！」
　極めつけに頭を殴られ、歩は頭頂部を手で押さえた。上から思い切り叩かれたので、思った以上に痛かった。ジンは怒鳴り散らしてから、呆れたように息を吐きだし、歩を見下ろす。見当摺�いな答えを聞いて、つい、キレてしまった。
「なんで俺がジンに嫉妬すんだよ……。わかんね�‘」
「わかんね�‘お前が凄いわ！！　あ�‘、も�‘、本当にお前バカだな！　バカすぎて、バカしか言えない奴に出会ったの生まれて初めてだ。こりゃ�‘、健人君が分からなくなる気持ちも十分に分かるわ。もうちょっとさ、考えて行動すれば？　思ったまま行動するから、自分の行動がちぐはぐになって分かんなくなるんだよ。健人君、巻き込まれて可哀想だ。本当に可哀想」
「だから……、可哀想ってお前が言うな！」
「……あのさぁ、一言、言っといてやるよ。お前、そんなだと、いつか健人君、攫われんぜ？」
　バカにしていた目が一変して、真面目になったジンを見上げ、歩は「誰に？」と尋ねる。嫉妬する理由も、健人に対してどう言う感情を抱いているのかも分からない�