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好き≠恋(日文版)-第13部分

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 バカにしていた目が一変して、真面目になったジンを見上げ、歩は「誰に?」と尋ねる。嫉妬する理由も、健人に対してどう言う感情を抱いているのかも分からないが、誰かに攫われると聞いたとき胸が軋んだ。それだけは許せないような、ジリジリと燃える感情が込み上がってくる。
「超優しくて、健人君に対して諏gな子。今、こんなバカに振りまわされてる時、優しくされたらコロっとしちゃうじゃないかなig摺盲屏丹寺浃沥毪长趣舛唷─ⅳ毪坤恧Δ胜 ,Fに一人、健人君に優しいことしてた奴、俺、見ちゃったし」
「え、それ、俺じゃないの?」
「ちげぇよ、バカ。だから、それが押しつけがましいって言ってんだよ。まぁ、お前が健人君ことどうとも思って無いなら、弟としてその恋愛は応援してあげるべきだと思うけどな。兄離れ出来てないブラコンなら、考えらんなくも無いけど」
「俺と健人は血が繋がって無いんだから、ブラコンじゃね坤恚 
 いきり立つ歩を見て、ジンは嘲笑する。
「血が繋がって無いとかそんなのかんけ桐‘だろ。お前がどうとも思って無いなら、健人君のことを邪魔するのはよろしくないってこと。あⅸ‘、折角ここまで来たけど、俺、帰るわ」
「……は?」
「せいぜい、気まずい雰囲気の中、頑張ってくれ。じゃあな!」
 にっこりと笑いながら出て行ったジンを見て、歩は苦虫を噛み潰したような顔をした。ジンが何を言いたいのか、分かるようで分かりたくなかった。けれど、健人とジンが二人で話していて嫉妬したことは確かで、そのことが胸の中で渦巻いていた。

 とりあえず、3人分の食材を買って健人は家路についていた。家に帰りたくない気持ちが強く、薄暗くなっていく空を見つめて、健人は立ち止った。ふと、視線を横に逸らすと、午後、歩が女と喋っていた公園が目に入る。ここで、何を話していたんだろうか。気になったが、聞く勇気なんて持ち合わせていなかった。
 気付けば、公園の中に入っていて、健人はブランコへ近づいた。誰もいない公園は寂しく、夕暮れを過ぎて夜になろうとしているので、長い影が落ちている。ブランコに座り、地面を蹴って揺らすと、ギ‘と軋んだ音が響いた。
「……かえんなきゃ」
 そう思っていても、まだ話しているのではないかとブランコから降りれなかった。小さく揺れるブランコに身を任せ、健人はため息を吐いた。家を出てから、何回、ため息を吐いたか分からない。頭の中を占領している歩に、苛立ちと悲しみを覚えた。
 家に帰ったら、どう言う顔をすればいいんだろうか。何も知らないふりをして、無表情でいられるだろうか。考えれば考えるほど、この公園で一緒に居た女が現れてくる。あれは彼女なんだろうか、それとも、ただの友達なんだろうか。確かめることも出来ず、悶々とル驻工毪坤堡坤盲俊
 空が完全に群青色に染まっていた。さすがにこれ以上はこんなところに居られないと思い、健人は立ち上がった。買い物に出かけてから、すでに2時間以上は経っている。そこのス雪‘へ行くのに、2時間もかかるはずがない。入り口に目を向けると、見慣れた姿が入り口に立っていた。
「健人?」
 遠くから話しかけられ、健人は足が止まった。声と姿で判断するなら、入口に立っているのは歩だ。どうして、こんなところまで来たんだろうか。心の準備が出来ていなかったので、どんな表情をして良いのか分からなかった。
「ごめんね、あんなこと言っちゃって。気、使わせたよね」
 歩は少し困った顔をしながら、健人に近づいた。そんな顔をさせたくて、こんなところにいたわけではないのに、困ったような顔で笑うから胸が苦しくなった。健人は歩から目を逸らして「……話は終わったのかよ」と小さい声で尋ねる。
「あぁ、ジン、ちょっと用事あるって言って帰っちゃったんだよね……。今日の夕飯、何にする予定だったの?」
 さすがに本当のことは言えずに、歩はジンが帰った理由を濁した。健人の手にあるビニ氪蛉·恧Δ趣工毪取ⅳ工盲纫鞖iは健人を見た。
「持つよ?」
「……いい」
 少し眉間に力を込めてそう言うと、歩の顔から表情が消えた。好意を無下にしたことは分かっているが、今、そんなことをされても素直に喜べない。そう分かっていたから、健人はあえてそれを断った。しかし、歩は健人の腕を掴むと無理やりビニ氪驃Zい取った。
「……ちょっ!」
「持つって。一人でこんなところに居させて、悪いと思うし。これぐらい、させて」
 無表情でそう言う歩に、健人は同情するなと叫びかけた。こんなところに一人で居たのは、決して、気を使ったわけではない。健人が勝手に居づらいと思って、逃げ込んだだけなのだ。それを歩に悪く思われる筋合いは無かった。
 同情される事が、少しずつ、苦しくなる。
 同じところに立っていたいと思うのに、いつも歩は健人の前に立とうとしていた。それが、余計に苦しさを増す。
「お前がっ……、悪いなんて思う必要、無いんだよ!」
 必死に顔を上げてそう言うと、歩の目に力が护盲俊=∪摔蛞娤陇恧鼓郡稀⑴盲皮い毪韦ⅳ饯欷趣饪砂毪人激盲皮い毪韦戏证椁胜ぁ7证椁胜い韦恕iは何も言わなかった。それが腹立って、健人は目を逸らした。
「……俺が勝手に、ここへ来たんだから」
「でも、俺は、健人に悪いと思った。だから、せめて荷物ぐらいは持ってあげたい。それって悪いことなのかな……?」
 縋るような声に、健人は顔を上げた。今にも泣きそうな、そんな顔をしていた。
「ねぇ、健人。ジンと何を話してたの?」
「……え?」
「俺の話、してたんでしょう? 俺、健人に酷いこと言っちゃったから、少しでも優しくしてあげたいと思ってた。けど、それって健人には迷惑だったのかな?」
 健人は歩に尋ねられたことを、答えられなかった。酷いことを言ってしまったのは健人も同じなことで、歩だけが悪いわけではない。それに、今までの行動がそんな理由からの優しさだとも思えなかった。歩の優しさは、不器用すぎて理由まで健人に通じない。一人で勝手に舞い上がり、そんな理由から優しくしてくれていたことに気付けなかった自分を物凄く恥じた。
 そんな優しさは、同情される事と、似ていた。
「……迷惑だなんて、思ってなかった」
「そう、良かった」
 ふと笑みを見せた歩に、健人は張り裂けそうになった。この場から逃げ出したくなるような、そんな衝動に駆られ、健人は足を踏ん張らせる。
 歩の優しさは分からないけれど、雷の日から一緒に居て迷惑だと思ったことは一度も無かった。それだけは伝えたくて、健人は声を振り絞った。それも嗚咽に変わりそうで、一所懸命に飲み込む。人から優しくされたことは滅多に無いけれど、こんなに辛いとは知らなかった。歩の優しさは、健人にとって辛くさせるだけだった。
「さ、帰ろ?」
 健人の腕を引っ張ろうとした歩の手を制止して、健人は「先に帰っていてくれ」と言う。もう少しだけ一人になる時間が欲しかった。今、一緒に帰れば、泣きだしてしまいそうだった。
「……どうかしたの?」
「買い忘れた物があるんだ。だから、先に帰っててくれ」
 歩の目も見ず、健人は出口に向かって走り出す。健人の名前を呼ぶ歩の声が聞こえたけれど、無視した。
 優しくしていると言われてから、健人は自分の気持ちにようやく気付いた。今、健人は歩の事を好きになっている。けれど、嫌いだった相手を好きになってしまうなんて、好きと言う感情は不確定で不安定なものだと思った。
 好きになったからと言って、恋をしているとは限らない。間摺い胜ⅳ长欷狭丹扦悉胜ぁ
 好きになるから恋に落ちるなんて、誰が言ったんだろうか。
 そんなのはウソだ。
 いつも通りと言う言葉ほど、不確定なものはなかった。いつも通りにしてればいいと思えば思うほど、いつも通りと言うのはどういう事だったのだろうかと健人は不安に陥る。流れる汗を拭って、玄関の扉に手をかけた。いつもより、扉が重たく感じたのは気持ちからだろうか。このまま、椋Г幛郡胜胄n動に駆られ、その場に立ち止まった。ジメジメとした蒸し暑い玄関は、健人が入ってくることを拒んでいるようにも感じた。
「……ただいま」
 玄関に転がっている靴を見つめながら、誰にも聞こえないような小さい声で呟く。リビングには明かりがついていて、時折、人の笑い声のような雑音が耳に入ってくる。歩はテレビでも見ているんだろうか。このときばかりは、リビングを通らなければ2階に上がれない家の構造を恨んだ。
 ゆっくりと家の中に上がりこみ、リビングの戸を開ける。襲ってくるような冷気に身震いし、健人はそっとリビングの中に入った。リビングはテレビだけが虚しくついていて、中には誰もいない。この隙をついて、健人はすぐに2階へと上がった。階段を駆け上がり、自分の部屋へと飛び込む。玄関と同じようにムッとした部屋の中は、電気も付いていないので暗い。その暗さが心をようやく落ち着かせたのだった。
 深呼吸をするように大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。それと一緒に、頭の中に氦盲皮い腱も吐き出されてしまえば良いのにと思ったが、無情にもそれは健人の中に残る。両親は金曜の夜中か、土曜の朝に帰ってくると言っていた。残り3日間、歩と二人きりでこの家にいるのはとても辛いことだった。
 かと言って、誰かの家に泊まるなど逃げることも出来ず、健人はその場にしゃがみ込んだ。どうすることが一番なのか分からず、考えることも面倒くさくなった。息を吐きだして、健人は立ち上がった。こんなとろこに椋Г袱长猡盲皮い皮庖馕钉蠠oい。何かしらあれば外へ出なければいけないのだ。無意味なことはやめようと思い、健人は扉を開けた。
「あ……」
 声が聞こえて顔を上げると、部屋の前に歩が立っていた。ノックをしようとしていたのか、右手を上げた状態で立ち止まっている。
「どうした?」
 極力、意識しないよう話しかけると、歩が気まずそうな顔をした。
「……いや、走りながら部屋に上がってきたみたいだから、どうしたのかなって思って」
「財布、置きに来てたんだよ」
「そっか……。あ、買い物してきた奴は適当に冷蔵庫入れておいたから」
「ん、ありがとう」
 健人は歩から目を逸らし、隣を通り過ぎる。意識をしないよう努力はしたが、やはり、一緒にいるだけで意識をしてしまう。胸が一瞬高鳴って、それからすぐに締め付けられた。優しくしてくれているのも、全ては同情からだ。そう言い聞かせて、足早に階段を降りた。
 ク椹‘で冷やされたリビングは心地よさを感じたが、追ってくる足音でそれがかき消された。健人はすぐにキッチンへと向かって、冷蔵庫の中を確認した。無造作に置かれている食材を見つめ、健人はひき肉を取りだした。ジンとの決めた献立は、結局、一人で作る破目になってしまった。誰かと料理をすることなんて滅多にないことだから、少しは楽しみにしていた。
「今日は何にするの?」
「……ハンバ啊
 健人は下を向いたまま、歩とは目を合わさなかった。目を合わすことも辛く、怖い。少し震えている手で玉ねぎを取ろうとしたところで、手首を掴まれた。
「……健人?」
 腕を掴まれていることも、声を掛けられたことも分かっていたけれど、顔を上げることが出来なかった。このままでは可笑しいと思われると頭の中で分かっていても、それを行動に移すことを体が拒否していた。
 何故だか分からないが、無性に泣きたくなる。嫌いなら、同情で優しくしてくれているぐらいなら、放っておいてほしいと切実に願った。
 目も合わさず、俯いているだけの健人を見つめて、歩は「……何か、手伝おうか?」と尋ねた。聞きたいことも色々あったが、気まずそうに俯いているのを見たら、追及などできなかった。そっと手を離すと、健人は思い出したかのように玉ねぎを掴んだ。
「特に無いから。テレビでも見てて」
 手伝ってもらうことよりも、早くこの場から去ってほしいと思い、健人は口早に言う。声が震えていないかなど、関係の無いことばかり気にしていて、歩の顔を見る余裕が無かった。1回でも目を合わせれば、無理やり積み立てた物が壊れてしまいそうだった。
「……ん、分かった。なんか、手伝ってほしいことあったら、言ってね」
 そっと離れて行く気配がして、健人は大きく息を吐いた。気まずい空気が流れてしまっているのは、公園で時間を潰してからだ。いや、ジンと一緒にいたのを見られてから、気まずかった。一緒に居たのがいけなかったのだろうかと思ったが、ジンを呼んだのは歩だ。では、この状態から考えると、仲良くしていたことが悪かったのだろうか。そんなことを聞ける勇気を持ち合わせていない健人は、疑問ばかりが頭の中に残った。
 ハンバ挨去荪匹去单楗坤蜃鳏恧Δ趣贰⒔∪摔献鳂Iを始める。まず、茹でるのに時間がかかるジャガイモから皮を剥いて、なるべく小さく切り刻む。ニンジンと一緒にジャガイモを茹で、玉ねぎをみじん切りした。歩はソファ俗盲匹匹欹婴蛞姢皮い搿%啸楗ē匹¥涡Δど坤堡瑹o情にも響き、それが余計に空しさを幔烦訾筏皮い俊
 トントンと野菜を刻む音が聞こえて、歩はテレビから健人に目を移した。俯いて作業をしているせいで、健人がどんな表情をしているのか分からないが、あまり良い表情をしているようには見えなかった。ジンが帰ってから、健人が帰ってくるのを待っていたけれど、中々帰ってこないことに痺れを切らして、迎えに行ってしまった。ス雪‘へ行くのに、そう時間がかかるとは思えなかったことと、いくら男と言えど世の中に居る変伲撙摔闲詣eなど関係ない。そんな人に何かされてるのではないかと思った瞬間に、家を出ていた。公園の前で立ち止まったのは、何の気なしにだった。こちらへ向かってくるス雪‘の袋を持った男を見て、すぐに健人だと分かった。声をかけた時、健人はとても気まずそうな顔をして歩を見た。その顔を見たときに、玄関で酷いことを言ってしまったのではないかと、今さら後悔したのだった。少しでも失った信用を取り戻したくて、買い物した荷物を持とうとしたのだが、それを拒否された時は傷ついた。それからの行動は、衝動だった。健人の腕を掴んで無理やり買い物袋を奪い取ると、健人は悲痛な顔をして泣きそうになっていた。前まで、泣きそうな顔を見てみたいと思っていたはずなのに、このときばかりは泣かせたくないと思った。泣かす原因が、自分になりたくなかったのだ。
 それから、ジンとの会話を追求してみたが、健人は会話のことは何も言わなかった。それにもどかしさを覚えて、ジンに言われたことを聞いてしまった。優しくすることが迷惑だったのかと尋ねて、健人からの返答を聞いてほっとした。迷惑じゃないと言ってくれたことはとても嬉しくて、つい、手を引っ張って帰ろうとした。すると、健人の手がそれを制して、逃げるように走り去ってしまった。健人は買い忘れた物があると言っていたが、そうには見えなかった。
 また何か、仕出かしてしまったのだろうか。健人の表情からは感情が読み取れず、歩はもどかしかった。このもどかしさが、何なのか、歩はまだ気付いても居ない。

 上手く行けば、今日の夜にも両親が帰ってくる。そう思った途端に、健人は安堵の息が漏れた。金曜日の朝、洗濯機を回しながら、健人は早くこの1日が過ぎてくれないかと祈っていた。
 この1週間は色々なことがあった。始めは、歩が家に居ないなら一人を満喫できると思い、楽しんでいたように思う。それから翌日の日曜、集中豪雨で停電し、それから健人の生活が180度変わってしまった。まず、歩が健人を抱きしめたこと。それから、嫌っていたはずなのに、歩が優しくなったこと。その後は、それが同情だと知った。同情されていると気付いた時は、少なからずショックを受けたけれど、同情されることも悪くないなと思った。
 一度、同情と言う言葉を辞書で引いた。辞書には「自分もその人と同じ苦しい境遇やつらい気持ちになったつもりで、共に悲しむこと」と書かれている。少しでも自分と同じ気持ちになってくれていると言うなら、それでも良いと思ったが、やはり良い気はしない。その中に、憐れみがあるから余計にだった。
 同情されるほど落ちぶれていないと思ったが、人と比べたら、そこそこ苦しい人生を送ってきたのだ。同情されても仕方ないと思った。母と再婚するまで、歩には父と母がいた。父が居ない生活など、歩からしたら考えられないことだろう。それは健人も同じことだった。人生の半分以上、父親の居ない生活を送ってきたのだ。歩の苦しみを健人が分かってあげられることは無い。歩から前の家族の話を聞いたことは無いが、離婚したからには何かあったのだろうか。母が再婚したのも、事後報告だったので、健人は佐偅窑撕韦ⅳ盲郡韦现椁胜ぁ¥饯欷恕⒌睍rは再婚したことに驚き、ショックを受けていたので知ろうとも思わなかった。
 それが今頃、再婚して1年半で気になり始めた。しかし、今さらそんなことを聞いてもどうにもならないだろう。歩の状況に同情できるとも思えず、健人は何も聞かないこととした。
 洗濯機が終了した音を聞いて、健人は洗面所へ向かった。护沃肖讼村铯蛟懁徂zんで、2階へと上がる。父と母の寝室にあるベランダへ行こうとしたら、扉の開く音が聞こえた。
「……あ、おはよう」
 寝ぼけているような声が聞こえて、健人は振り向いた。寝ぐせを付けた歩が、ボ盲趣筏勘砬椁墙∪摔蛞姢皮い搿P·丹ど恰袱悉瑜Α工妊预ぁ⑶奘窑沃肖巳毪恧Δ趣筏郡趣长恧恰⒔∪摔蠚iに腕を引かれた。
 その衝動で、洗濯物を入れた护蚵浃趣筏皮筏蓼Α
「あっ……!」
 足元に落としてしまい、健人のつま先に护证膜搿¥丹郅赏搐蠠oかったが、つま先に当たったので少しだけ痛みを感じた。散らばった洗濯物を拾おうとしたが、歩が腕を掴んでいるため、拾うことが出来なかった。
「……どうしたんだよ」
「いや、今日で父さんと景子さん、帰ってくるなぁって思って……」
 困ったように笑う歩を見て、健人は首を傾げた。そんなことを言いたいために、わざわざ引きとめたとは思えない。何か言いたいことがあったのだろうが、歩は健人が追及してくることを遮る様に手を離して、落ちた洗濯物を拾った。
「はい。俺、今日は一日、家に居るから」
「……そう」
 手渡された洗濯物を拾って、健人はベランダへと向かった。どうして引きとめたのかは分からない。掴まれた腕が無性に熱く感じて、映画館で手を掴まれた時のことを思い出す。あの時は、映画を見ていて雷に驚いた時だ。その頃から、歩は雷が嫌いなのを知っていたんだろうか。それとも、映画を見て怖がっていると思われたんだろうか。嫌いな相手を宥めさせて、どうするつもりだったのだろうか
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