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好き≠恋(日文版)-第15部分

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「でも、母さんとか、義父さんには……、冷たく出来なかった。育ててもらってるからとか、家に住まわせてもらってるから、冷たい態度を取っちゃいけないと思って、出来るだけ普通に振る舞ってた。だけど、お前は……、歩なら嫌っても良いんじゃないかって、歩を嫌ってることで俺は自分を保ってただけなんだ……。謝って済まされる事じゃないって言うのは分かってる。勝手に嫌いって決めつけて、突っぱねて、優しくしようとしてくれてたのを最初から拒んで……。だから、俺はお前に嫌われても仕方ないんだ。嫌われるようなことを、ずっとしてきたんだから」
 健人の表情が苦渋に滲んで、目を瞑る。今まで泣いてこなかったせいか、泣こうと思っても涙なんて出てこなかった。泣いて、許される事ではない。泣いても、同情を引くだけだと分かっていても、今は泣きたいと思った。
「謝っても許されないことぐらい分かってる。優しくしてくれたことだって、今になってようやくありがたいと思った。でも、今頃気付くなんて、俺は本当に最低で、どうしようもない奴で……。自分のことしか考えてない、凄く弱い奴なんだ。だから……、嫌いなら嫌いではっきり言ってくれ。じゃないと、俺、分からないから。言ってくれないと、深読みなんか出来ないから、分からない……」
 崩れるように蹲った健人に釣られて、歩も一緒にしゃがんでしまう。掴まれている手がとても温かいのに、ク椹‘が効いているせいか、とても寒く感じた。何も言ってこない歩に、健人は少しだけ悲しさを覚えた。
 数秒間、沈黙する。啜り泣く様な息遣いが聞こえて、歩は健人を見つめた。
「……健人」
 名前を呼ぶと、ハッとしたように顔を上げて、健人は歩を見つめる。まっすぐ歩の目を見つめる健人は、不安げで苦しそうだ。こんな時こそ、泣いてしまえば良いのに、健人は泣けずに苦しんでいるようだった。
「健人は俺のこと、どう思ってるの? 嫌い? 好き?」
 優しく尋ねられて、健人は唇をかみしめた。好きか、嫌いか、その二択なら健人はすぐに選ぶことが出来る。出来るはずなのに、言葉が出てこなかった。好きと言って、歩に拒否されたらどうしよう。そんな考えが過ぎって、答えることが出来ない。
「……俺は」
 一言、だ。たったの2文字を言うだけなのに、こんなにも出ないとは思わなかった。口が渇いて、喉が痛い。フロ辚螗挨尉@ぎ目を見つめて、健人は息を吸った。
「健人のこと、好きだよ。俺は」
 まず、頭に浮かんだのは、空耳かどうか、だった。言葉が頭の中に流れてきたとき、それを情報として捉えることが出来なかった。顔を上げて、先ほど吸った息を吐きだした。言葉と一緒に吐き出す予定だったのに、予定とは全然摺ρ匀~が声として出てきた。
「……え」
 吐き出した息を共に出てきた戸惑いの声に、歩は困ったように笑った。
「だから、健人が俺のこと、どう思ってるか気になる。今は、嫌われて無いってことで、良いんだよね」
 何でも許してくれるような笑顔を向けられて、健人は何も答えることが出来なかった。ひたすら、何度も頷いているうちに、目から何かが零れてくるのが分かった。パタパタとフロ辚螗挨怂韦浃沥郡长趣恰⑵い皮い毪韦坤葰莞钉い俊
「健人は最低な奴じゃない」
 そこだけはどうしても否定したくて、少し強い口眨菤iは言う。
「でも、俺はっ……」
「最低な奴じゃない」
 もう一度、今度は強い口眨茄预铯欷啤⒔∪摔峡冥颏膜挨螭馈W畹亭坤人激盲皮い毪韦恕iがそれを認めさせないと何度も言い返される気がした。こんなにも良い奴だと言うのに、どうして嫌ったんだろうかと、昔の自分が憎くなった。健人は優しく髪の毛を撫でる歩を見つめた。
「無理してる、わけじゃないんだな」
「無理なんかしてないよ。健人が思ってるほど、俺は器用な奴じゃないし、嫌いな奴と話しあったりしようとも思わない。…………それに、健人が思ってるより、俺は優しい奴なんかじゃないよ」
 歩は健人の腕を取って、立ちあがらせた。目を逸らさず、見つめている健人を見下ろして、少しだけ微笑む。健人の想いを聞けて、すっとした。今まで嫌われていた理由も分かって、肩の荷が降りた。何が原因で二人の関係をこじらせていたのか分かって、すっきりとする。
「俺が可哀想だからじゃ……」
「そんなんで優しくしてると思ったの? 確かに、可哀想だと思ったことはあるよ。雷に怯えてる時とか、ちょっと思ったかも。でも、それだけで優しくしてやれるほど、俺は出来た人間じゃないし。本気で健人のこと嫌いだったら、雷鳴ってて怯えてるのを見ても、絶対に無視してた。一人で怯えてれば良いと思ってる。でも、俺は放っておけなかったんだ。健人が一人でガタガタ震えてるの見たら、抱き締めずには居られなかった。一人じゃないって、健人に教えてあげたかった」
 健人の腕を取っている歩の手が、少し震えているように感じた。健人は手に目を移して震えているのを見て、歩に目を移す。寒いわけでもないのに、どうして手が震えているのか、分からなかった。
「ジンは、健人のことを可哀想だって言ってた。俺だって可哀想だと思ったのに、可哀想なんて同情するなって思ったんだ。すげⅴ啷膜い俊=∪摔戎倭激─盲皮毳弗笠姢皮郡椤ⅴ弗螭啶啷膜い啤⒃绀∪摔橐悉丹胜悚盲扑激盲俊A证仍挙筏皮霑rもそうかな。健人が誰かと楽しそうに喋ってるとさ、イライラしてる自分がいるの。俺さ、すげ黄饔盲坤椤ⅳ饯ρ预Δ坞Lせなくて……。でも、健人にこんなこと言えないし、一人で空回ってた。だから、凄く健人には迷惑かけたよね。ごめんね……」
 掴んでいる手が離れそうになり、健人はその手を掴み返した。その手が離れて行くことが、何よりも辛い。歩の手を握って、健人は顔上げる。
「同情されるのは、好きじゃない。むしろ、嫌いだ。可哀想だなんて思われたくない。歩にも……、同情されたくないと思った。でも、優しくしてくれるなら同情でも良いと思ったんだ。俺のことを考えてくれるなら、同情でも何でもよかった……」
「……同情なんか、してないよ。可哀想って思ったら、同情なんか通り越しちゃったんだよ」
 呆れたように笑っている歩を見て、健人は首を傾げた。言っていることの意味が、よく分からなかった。
「……どう、いう……」
 尋ねる前に健人は手を引っ張り上げられ、つま先立ちになる。いきなり、引きあげられたことに驚いて歩を見ると、歩の顔が目前にまで近づいていた。唇に何か暖かいものが触れて、すぐに離れた。
 引きあげられた手がそっと離れて、足に地面が付いた。
 健人は顔を見上げたまま、固まっていた。
「同情通り越して、好きになった。さっきも言ったと思うけど、健人のこと好きだよ。俺は」
 もう一度はっきりと言われ、健人は唖然としたまま、歩を見上げていた。
 この好きの意味が、普通の好きとは摺Δ取o理やり思い知らされた。それもまた、脳が情報を拒絶し、理解しようとする前に思考回路が停止してしまった。
「健人のこと、好きだよ」
 この言葉を聞いたのは、二度目だった。一度目のときは、冗談を言っているような、からかわれている気がして間に受けていなかった。けど、今は摺Αiの目は真剣で、挙句の果てには唇まで合わせてきた。それが何を意味しているのか、言われなくても分かっていた。ただ、信じられない。それだけだった。
「……ごめん」
 歩の指が、健人の唇に触れる。そこでようやく思考が現実に戻ってきた健人は、触れられた衝撃で体を引かせてしまった。嫌だったわけではない。けれども、今の行動は、歩を拒んでいるように見えた。
「嫌、だよね。男にキスされるなんか。……ごめん、忘れて」
 勢いよく引いた腕を、健人は掴んだ。酷く傷ついた顔をしている歩を見て、悪いことをしてしまったと後悔した。嫌だと思ったわけではない。それだけは伝えたかった。
「摺Α!@いただけだ」
「ほんとに? 気、遣わなくていいんだよ。気持ち悪いなら、気持ち悪いでいいから」
「お前に気なんか遣ってない!」
 あまりにも気遣ってくる歩に嫌気が差してしまい、健人は怒鳴るように否定した。その後で、大声を出してまで否定することではなかったと、唇を押さえて俯いた。何事もヒステリックに叫べば、問睿鉀Qするわけではない。いらいらして、怒鳴る癖がいつの間にかついてしまっていた。
 沈黙が訪れて、秒針の音が部屋に響いている。なんだか、恥ずかしいことを言ってしまったのではないかと思い、健人は顔を上げることが出来なかった。
「俺の話、聞いてくれる?」
 縋るような声が聞こえて、健人は顔を上げた。今まで見たことも無いぐらい、悲しそうな顔をしている。怒鳴ってしまったことで、歩がこんな顔をしているのかと思って、後悔した。一回、首を縦に振ると、歩は「ソファ俗恧Δ工妊预盲平∪摔伪持肖蜓氦筏俊
 どんな話をするのか、見当もつかなかった。これが大事な話と言うのは分かっていて、それを受け止めれるかどうか、健人は不安だった。
「家族の話、なんだけどね」
 ポツリと呟くような、とても小さい声だった。歩が自分から過去の話をするなんて、滅多にないことだ。以前、ジンが尋ねないと聞かないと言っていたのを思い出して、健人は前を見つめている歩の横顔を見つめた。前を見ているだけで、その目には何が写っているのかは分からない。でも、無表情にならなければいけないほど、話すのに覚悟がいることは分かった。
「俺には、兄ちゃんがいるんだ。あんまり、父さんとか景子さんの前では、話すことが出来ないんだけどさ……。父さん、気にするし。兄ちゃんとは5歳離れてるんだけど、ケンカとかあんまりしたことなくて、結構、仲良かったんだ。父さんと母さんが離婚するって聞いたとき、何が嫌だったかって言ったら、俺は兄ちゃんと離れるのが嫌だった。でも、二人の関係がすでに壊れてるのは分かってたから、そんなこと言えなかった。母さんと離れるのは、はっきり言って嬉しかったしね」
 自嘲気味に笑う歩を見つめて、健人は何も言わなかった。健人が話しているとき、歩は黙っていてくれたのだから、健人も黙って聞こうと拳を握った。
「母さんが作る料理の味って、俺、分かんないんだ」
「……え」
「家の中で、俺は居ない存在。父さんと兄ちゃんは相手してくれるけど、母さんは俺になんか興味が無くて、何をしていようと何も言わないし、見ることも無かった。最初は、構ってほしいから悪戯とか良い事もいっぱいしてきたけど、何も言ってくれない。見ることすらしない。常に、兄ちゃんのことばっかり気にするんだ。あぁ、そう言えば、兄ちゃんが受験のときに、俺が兄ちゃんの部屋に行ったら、物凄く怒ったかな。受験の邪魔をするなって、叫ばれて、怒鳴られて、殴られた。俺、ただ、兄ちゃんにお茶を持っていこうとしただけなのに……。兄ちゃんが、かなり高いレベルの学校行くの知ってたから、頑張ってって言いたかっただけなんだ。それすらさせてもらえないことに、腹が立つを通り越して呆れたよ。せめてもの反抗で、笑ってやった。怒鳴ってる最中も、殴ってる最中も、思いっきり笑ってやったら気持ち悪いって言われたんだ。こっちからしたらさ、何も悪いことしてないのに、勝手に俺のこと嫌って、相手にもしないのに、兄ちゃんのところへ行ったら怒るんだ。自分勝手も良い所だろ? きっと、あの人の中で子供は兄ちゃんだけだったんだろうな。何で、俺を産んだのかも分からないし、本当の子供なのかと疑ったこともあった。けど、俺はあの人と父さんの子供なんだよ。兄ちゃんもそう。……可笑しいだろ? 兄ちゃんと同じなのに、俺だけ嫌われてんの。最初、健人が俺に対して冷たい態度取ったとき、母さんとダブったんだ。だから、健人のことはそんなに好きじゃなかった。母さんへの復讐を、俺は健人にしてたんだと思う」
 健人は黙って、歩を見つめた。この1年半、してきたことは謝っても取り消せるわけでもないし、歩の心の傷をえぐってしまっていたとしても、それは消せない事実として残る。本当に謝っても済まされないことをしてきたのだ。健人は謝罪の言葉を噛み砕き、それを必死に飲み込んだ。幸せだと決め付けていた歩の家庭に、そんなことがあったとは、思いもしていなかった。
「俺、マジで人に優しくするのって苦手なんだよね。優しくしてるフリなんだ。ある程度はさ、どう言えば相手が喜ぶか分かってるから、喜ぶような言葉を言ってる。一人の奴がいたら、声をかけて、仲間に入れてやったり。そんなのって、全部、偽善だったんだよね。ジンはそれに気付いて、俺にすげ欷皮郡巍¥挨稀⒑螛敜胜螭坤瑜盲啤灓筏筏皮ⅳ菠皮毪韦瑐イい螭袱悚胜い盲婆Qられちゃってさ。まぁ、でも、何でそんなことをジンに言われなきゃいけないのかわかんなくて、俺もキレ返したんだけど。あれって、図星を突かれてたから、キレたんだろうな。今だから、そう思う。だからね、健人にはわざと、優しくしてた。俺が笑えば笑うほど、健人って凄く嫌そうな顔をしたから、それも母さんとちょっと似てて、面白くなっちゃったんだ。いつも嫌そうにしてて、俺には興味ないくせに、俺が笑うと嫌そうな顔をする。なんか、復讐できなかったことが出来て、楽しかったのかもしれない。ごめんね、健人。嫌な思いしてるのは分かってたんだけど、やめれなかった」
 健人に目を向けて、辛そうに笑う歩を見て、健人は「無理して、笑うな」と窘める。歩が無理をして笑っているのは、すぐに分かるようになった。苦しそうな笑顔を見ているだけで、健人の方が辛くなった。
「俺も、お前に嫌われるようなことをしていたんだ。お互い様だろ」
「……そう、かな?」
 迹盲筏瑜Δ趣筏胜iに、健人は「そうなんだよ」と言いきって、目を見つめた。健人は歩を嫌うことで、家族と言うの物を拒んでいた。歩は健人を嫌うことで、母親に対する復讐をしていた。それは、互いに相手を目の前にしながら、別の幻影を見ていたのだ。健人が歩を嫌った理由も、歩が健人を嫌った理由も、二人はその人自身を嫌いになったわけではなかった。最初から、もっと普通に出会えていれば変わっていたのだろうが、出会いが出会いだっただけにそれに気付くことなく、時の流れとともに矛盾が生じて崩れてしまったのだ。
 崩れてしまったものは、やり直せばいい。歩がそう望むなら、健人もそのつもりで居た。
「健人と言い合ったとき、もういいやって思ったんだ。思う存分、からかったし、撸Г螭坤贰荬绀欷郡盲蒲预盲郡榻Y構気が晴れてたから。もういいやって思って、健人とは関わらないでいようと思ったんだ。健人もその方が良いって言ってたし。そっから、よくよく考えてみると、俺って嫌いな奴にあんなことしちゃうほど、ガキだったんだな盲扑激盲俊¥浃盲绚辍⑷摔坤椁怠⒄lかを嫌いになることなんていっぱいあるし、今までも嫌いな奴って沢山いた。けど、健人はちょっとだけ摺盲郡螭坤瑜汀
「……摺盲浚俊
「そう。関わらないって決めたら、俺は絶対に関わらないんだけど、健人のことを気にしてる俺が居たんだ。清々としてる顔を見て、ちょっとムカついたり。酷いことをしてたのに、どうして健人は普通の顔をしていられるんだろうって疑問に思ってた。そんなとき、ちょっとだけ母さんを思い出してたけど、すぐに消えちゃうんだよね。不思議と」
 歩の話に耳を傾けながら、健人は疑問に思った。健人のことを好きだと言ったが、それは母親を重ねているだけなのではないかと。それはそれで、また悲しい結果が見えそうで、怖くなる。今でも歩は、自分自身を見ていないのではないかと不安になった。不安げに見上げる健人を見て、歩は少し笑った。
「健人は母さんに似てたけど、今は摺ΑH弧⑺皮皮胜盲俊K皮皮胜い韦恕ⅳ嗓Δ筏浦丐亭皮撙皮郡证椁胜ぁ
「……ほんとかよ」
「ほんとだよ。少なくとも、あの雨の日に、震えている健人を見た時は、健人のことしか考えられなかった。そっからずっと、俺は健人のことだけ、考えた。俺もさ、そう良い人生を送ってきたわけじゃないけど、健人はもっと辛い思いをしてるんだろうなって思ったんだ。その辛さを、少しでも分かってあげたいって思った。俺がいることで、健人の辛さをやわらげてあげることができるなら、そうしたいって思うようになったんだ」
 そう言ってくれるのはとてもうれしかったが、それすらも重ねてみているのではないかと、健人は疑心暗鬼になっていた。歩の母親がどんな人なのかは分からないが、父親が居なくなることよりも、母親に嫌われる事の方が辛いと思う。そんな辛い人生を歩みながらも、平然としている歩が可哀想だと、思った。
「健人と言い合ったときに、母さんを重ねるのはやめたよ。どんなことを言おうと、母さんは俺と言い合ったりなんかしなかったから。俺とは絶対に目を合わさないし、何も言わない。本当に、母さんの前で俺は、透明人間だったから。でも、健人は俺と会話をしてくれるし、目も合わせてくれる。いつの間にか、俺は本音なんか人にぶつけなくなったけど、健人だけにはちゃんと本音は言ってた」
 歩はクスッと笑ってから、健人の髪の毛を撫でる。その手はとても優しくて、逆に悲しくなった。
「親友だと思ってるジンにも、俺は本音を言わない。でも、健人にはこうして言える。家のことを話したのは、健人が初めてだよ」
 こんなに苦しい過去を誰にも言わず、椋Г皋zめていた歩を見ていると、健人が苦しくなった。歩はそれを苦しいことだと分かっていないのだろう。分かっていないから、こうして笑えるのだ。これほど悲しいことは無く、悲痛な笑みに見えた。
 健人は歩に手を伸ばし、少し大きい背中に手を回した。抱きしめるつもりが、抱きついたようになってしまい、ゆっくりと背中を撫でられた。
「どうしたの、健人。ダイタンだね」
「……うるさい。お前、ちょっと黙って俺に抱きしめられてろ」
「俺達、可哀想だね」
 健人にしか聞こえない、小さい声だった。歩は顔を健人の肩口に埋めて、ゆっくりと息を吐きだした。自分より小さい体なのに、力強く抱きしめられると支えられているようだった。可哀想と言う言葉は嫌いだったけれど、それを二人で分かち合えるなら、それでも良かった。
「……俺達は、可哀想なんかじゃない」
「え……?」
「もう、可哀想じゃない。可哀想なのは俺達の過去だ。俺だって、自分の気持ちを誰かに喋ったことは無い。お前だけだ。俺はこれからも、誰かに喋るつもりもないし、可哀想なんて言わせない。可哀想だった過去は、今日でもう終わりにすればいいじゃねぇか」
 ひと際強く、背中を抱きしめられて、歩は笑った。全てを吐きだしてすっきりしたのと、可哀想だった過去とは
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